そばの話【その9】

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そばの話【その9】

山形が誇る“寒ざらしそば”の話

1年で一番寒い時期に蕎麦の実を清流に晒し、桜の開花にあわせて食べる。
それが、山形に春の訪れを告げる、“山めん寒ざらしそば”です。

雪深い、大寒の時期に行われる浸水作業
毎年ちらちらと雪が舞い散る中、山形の人里離れた深山で、“山めん寒ざらしそば”の仕込が始まります。
寒ざらし蕎麦とは、昨年の秋に収穫した新蕎麦の実を冷水に浸した後、寒風に晒して乾燥させて作る蕎麦のこと。
冷たい清流に浸すことであくが流れ、ほのかな甘みが増すのが特徴。江戸時代に行われていた方法を約40年前に山形で復元。現在まで続いています。
静粛な雰囲気で神事が進む中、聞こえてくるのは心地よい沢の音だけ。毎年、今年もおいしい蕎麦ができるように、と祈ります。
神事が終わるといよいよ本番。山形の麺類組合関係者10数名が水温1℃の沢水に腰まで入り作業を始めます。ネットに入れられた蕎麦の実が次々に投げ込み、寒さに歯を食いしばりながら、1袋12キロ、合計250袋の蕎麦の実を冷水に浸していきます。その後、約2週間ほど清流に浸し、立春の頃に引き上げ、自然乾燥を行います。
こうして手間ひまかけて作られた“山めん寒ざらしそば”は、桜の咲き誇る時期に初めて食べることができます。