そばの話【】

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そばの話【幻の山形天保そば】

170年の眠りから覚め、現代に蘇る!!『幻の山形天保そば』
1998年のとある日、福島県の旧家の天井裏から「そばの実」がびっしり詰められた《俵》が発見された。

時は、江戸時代後期。冷害凶作にみまわれ餓死する者が続出した、世に言う天保の大飢饉の頃。同じ思いを子孫にはさせまいと、貯蔵食として天井裏にその《俵》を保管したのだという。そして、代々言い伝えられ、今日まで大切に保管されていた。まさに、ご先祖が残した宝物であった。

「そばの実」は長さ70cm、直径30cm位の小型の俵に詰められ、更に二重三重の俵で保護されており、それぞれ俵の隙間には木炭と炭の粉がびっしり詰められていた。それは、ネズミなどの食害から「そばの実」を守る為の知恵であった。

発見後、先祖が残した「そばの実」を何とか蘇らせたい。と、国や大学の公的機関に送り発芽試験を依頼。しかし「すべての種子で胚は発芽活性を喪失、成長能力はない。」との報告であった。

それでも、あきらめきれない熱意と、その「そばの実」約100グラムを運命的に引き継いだ「保存の会」のメンバーらがこの試みに挑戦したのである。専門の公的機関でも全く発芽する気配すら見せなかった天保そばを、見事に発芽させた。天保そばが山形の地で蘇ったのだ。

他品種と交配しないよう、日本海に浮かぶ飛島の畑で種子を採取、山形市内の畑で栽培した。収量は徐々に増加。

そして、十年間、試行錯誤を重ね、ついに、店頭販売できるまでの収量を確保するまでになったのだ。

天保そばとは、そんな謂れのある幻のそばなのである。